「第1回ハヤカワSFコンテスト贈賞式」に出演いたします2013/10/02

 「第1回ハヤカワSFコンテスト贈賞式 読者ご招待のお知らせ」
 http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000688

 ※まだ打ち合わせ中なのですが、公式サイトに告知が出ましたのでお知らせ致します。

 ※【訂正です】ハヤカワさんのイベント、過日「先着」と書いてしまいましたが間違いでした。応募数が多いと抽選になるそうです。よろしくお願い申し上げます。

阿佐ヶ谷ロフトAトークショー(2013.8.11)リポート2013/08/13

 阿佐ヶ谷ロフトAトークショーのリポートです。過日、小学館の編集者様からお話を頂き、「白井さんとのトークなら喜んで」とお受けした企画です。

 ●白井弓子×上田早夕里トークショー「日本の夏、SFの夏」
   開催場所:「阿佐ヶ谷ロフトA」
   司会  :大森望

 白井さんの『WOMBS』最新刊(第四巻)発刊記念として行われました。白井さんの著作は、入手できるものはすべて読んでいます。今回は『WOMBS』を中心に、創作秘話をうかがって参りました。阿佐ヶ谷ロフトAは、客席にテーブルが並び、食事を摂りながらトークを聞ける会場でした。

 まず、『WOMBS』を書いた動機から質問。現代社会において「妊婦」という言葉から連想されるイメージ、特にネガティヴな印象を覆したかったとのこと。プライベートなものになり過ぎている妊婦・妊娠の話題を、パブリックなものとして積極的に顕在させてみたかった、と。

 『天顕祭』を書くよりも先にアイデアがあった。長年温めてきたネタ。途中経過のメモを、拡大コピーの形で見せて頂きました。『WOMBS』の原型ともいうべき作品を、ずいぶん昔に、一度お描きになっているそうです。その後、まずアルメア軍曹のイメージが「絵」として立ちあがり、『天顕祭』執筆を経て、どんどん具体的な設定やストーリーが立ちあがっていった。

 『WOMBS』は現在第四巻まで出版されています。まだ完結していません。
 http://www.amazon.co.jp/dp/4091884946
 http://www.amazon.co.jp/dp/409188539X
 http://www.amazon.co.jp/dp/4091885837
 http://www.amazon.co.jp/dp/4091886264

 SFファンなら見逃せない本格SF作品です。国家の存亡をかけた闘いに、女性だけで構成された部隊が、文字通り命懸けで関わっていく――苛烈な戦争描写、スケールの大きなストーリー展開、SF的な謎、登場人物に対する丁寧な心理描写など、目を離せない要素がたくさんあります。物語のベースに置かれた生物SF系のアイデアも秀逸です。

 トークショーの準備としてメモを取りながら読んでいたら、B5版のルーズリーフで18ページほどの分析メモができたので、当日、これを会場へ持ち込みました。すべてを質問させて頂いたわけではなく、また、第五巻以降のネタバレに繋がりそうな部分は言及を避けました。トークの中で挙がった話をいくつか抜き出しておくと、

 ・『WOMBS』の原形となった作品が書かれた時期は、松尾由美さんの〈バルーン・タウン〉シリーズ(*1)が書かれた時期と、偶然にも一致している(日本SF史における時代的な共鳴?)

 ・ニーバスには、オスもいる。

 ・日本のSFアニメや漫画では子供(未成年)が戦士なるパターンが多いので、大人の戦士としての「闘う妊婦」を描いてみたかった。

 ・中間管理職の話が好き。アルメア軍曹をとても気に入っている。

   ※ちなみに、私はアルバ大使が出てくるターンの話が好きで、ここはAIと人間の噛み合わなさの表現が傑出しています。感情のないAIと接触することで、職掌柄、冷静で優秀な交渉能力を持っているはずの人間(特命全権大使なので、とても優秀な人が派遣されているわけです)の人間性が、どんどん露わになっていく。SFとして非常に面白い部分だと思います。


 ・影響を受けた少女漫画の話。陸奥A子さん、萩尾望都さん、清水玲子さん、樹なつみさん、佐藤史生さんなどのお名前が挙がりました。私は、エンターテインメント作品の中には、〈何かを得て勝利する物語〉だけでなく、〈喪失(何かを失うこと)を結末とする物語〉もある、それも物語の感動のひとつであると思うのですが、白井さんも、この種の作品に心を動かされる部分をお持ちだそうです。

 ・第五巻以降、ストーリーがもっと大変なことになる……らしい。

 ・『WOMBS』と並行する形で、別社から新しい作品が発表される。


 生物SF的な観点からは、ニーバスの性質、生態系内での役割、変異の方向性など、読みどころがたくさんあります。私が最も気になるのは、人工培養されたニーバスの体組織の変異です。目・脳・脊椎の位置関係から考えるに、第四巻まででは、まだ、どんな生物になるのか断定できません。あの形は脊椎動物の基本形なので、四つ足動物、直立(二足歩行)生物、魚類、何にでも変わる可能性があります。
 ニーバスおよびセカンドの〈本体〉が、まだ一度も描写されていないことは、とても魅力的で、読者を惹きつける力を持った謎です。この世界観における〈人類〉と〈知性〉の定義も、まだ明らかにされていません。これらが、残りの巻でどのように開示されていくのか。

 また、本作は、異文化・異生物との〈衝突と断絶〉の物語でもあります。それが、戦争という最も苛烈な形で噴出する構成になっています。ファーストから見ればセカンドは侵略者ですが、ニーバスから見ればファーストもセカンドと同じように侵略者です。そして、ファースト軍部内でも、同国人同士の〈衝突と断絶〉があります。主人公サイドの、この二重性、三重性(決して一方的な被害者ではない)は、物語に奥行きと深みを与えています。
 この〈断絶の物語〉への希望があるとすれば、それはどういうものになるのか。もし、希望など何もないという結論に至るのだすれば、物語の果てに待ち受けるものは何なのか。何らかの光が置かれるはずという最終刊の発刊が、いまから待ち遠しくてたまりません。(*2)

 トークは休憩を一回挟んで二時間半に及びました。ここには書き切れないほどの濃い話を、たくさん聞かせて頂きました。上記のリポート内容は、当日出た話のほんの一部に過ぎません。

 トークショーの後はサイン会がありました。白井さんのサインは、ひとりずつ、すべての本にイラストをお描きになるという丁寧なものです。私はいつも通り、名前と落款付きのサインをさせて頂きました。読者の方々から、そのつど丁寧な言葉を頂いて感激しました。差し入れまで頂いてしまって恐縮でした。本当にありがとうございました。

 二次会では、白井さんと一緒に、トークショーで語り洩らしてしまった話を、もう少し詳しく語り合いました。多くの方々のご尽力で、楽しい時間を過ごすことができました。あらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。


【注釈】

 (*1) 松尾由美さんは、旧〈ハヤカワ・SFコンテスト〉で1991年にデビュー。このときの同時受賞者は森岡浩之さん(受賞作は「夢の樹が接げたなら」)。〈バルーン・タウン〉シリーズは、人工子宮での出産が当たり前になった時代に、自然出産をあえて選択した妊婦だけが住む街〈バルーン・タウン〉で起きる事件を解決していくSFミステリ連作。

 (*2) 『WOMBS』は、書き下ろし単行本という形で、年一回だけ刊行中です。

トークショー御礼2013/08/12

 帰宅しました。阿佐ヶ谷ロフトAへご来場頂きました方々、お世話になった方々へ、あらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。帰ったばかりで、まだ、ぐったりしておりますので、当時の様子は、また後日レポートさせて頂きます。取り急ぎ、御礼のみ。

白井弓子×上田早夕里トークショー「日本の夏、SFの夏」2013/07/28

 8月11日(日)に、漫画家の白井弓子さん(『天顕祭』『WOMBS』などの著者)とのトークショーに出演します。場所は「阿佐ヶ谷ロフトA」。時間帯は夜の部です。

 OPEN 18:00 / START 19:00
 前売¥1,500/当日¥2,000(共に飲食代別)

 詳細は下記にあります。
  「阿佐ヶ谷ロフトA」
  http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/17663

  「イーチケット」(前売り券購入先)
  http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002106011P0050001P006001P0030001

国際SFシンポジウム(大阪)御礼2013/07/23

 昨晩は、第二回国際SFシンポジウム(大阪)がありました。大変お世話になりました。ありがとうございました。

 参加作家の方々、進行を担当して下さった方々、準備を整えて下さった方々、会場まで足を運んで下さった方々に、あらためてお礼申し上げます。私はシンポジウムには不慣れなので、ほとんどお役に立てず申し訳なかったと感じています。

 同時通訳の方々、同時通訳をモニターして下さった方々、ありがとうございました。お手数をおかけすることばかりで、本当に申し訳ありませんでした。同時通訳付きというのは初めて参加しましたが、やはり、自分には難易度が高く、ディスカッション自体に対してではなく、自分自身に対して心残りの多いパネルでした。ただ、勉強にはなりました。